つり場を守ろう

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HAT四原則「自主・民主・公開・環境」のうち、「環境」(つりを愛する立場から、広くつり環境・つり場環境の保全と発展に必要な活動を行います)テーマ関連の記事や運動の紹介するページです。

三番瀬、またまた埋め立ての危機

 私たちHATも「三番瀬を守る署名ネットワーク」に参加しており、1998年~2000年にかけて「三番瀬を守ろう! ハゼつり大会」を開催しました。多くの人々の反対運動が実り、2001年に三番瀬埋め立て白紙撤回を公約に掲げた堂本暁子氏が千葉県知事に当選して埋め立て計画は凍結されました。しかし、行政は全くあきらめておらず、機会あれば…と狙ってきましたが、安倍政権下、いよいよ公然と動き出しました。干潟は私たちがこよなく愛する東京湾の魚たち…ハゼ・シロギス・アジなどの揺り籠であり、生息場所でもあります。いつも心配する秋口の青潮発生(これで江戸川のハゼや盤洲のシロギスなどは何度も大量死している)も、埋め立てと深い関係があるようです。
「ネットワーク」でも、また新たな署名活動などを広げていくと思いますので、HATとしても是非協力して行きたいと思います。参考資料として2つの新聞記事を以下に紹介します。(2019.1 文責/佐近津里彦)

国、第二東京湾岸道路の検討会設置 自然への影響課題
(日経新聞2019/1/19電子版より抜粋)

 東京と千葉を結ぶ「第二東京湾岸道路」の建設計画について、国土交通省が建設に向けた検討会を設置する方針を示した。東京湾奥の浅瀬・干潟「三番瀬」の埋め立て問題が障壁となり、建設構想が長年棚上げ状態だった。検討会では具体的なルートや工法が議論されるとみられるが、自然環境への影響をどう抑えるかが課題となる。
 第二湾岸道路は東京都南部と千葉県湾岸地域を結ぶ地域高規格道路。石井啓一国土交通相が17日の森田健作知事との会談で、第二湾岸道路に関する検討会の設置を表明した。
 第二湾岸道路は東関東自動車道より東京湾側に建設されることが想定されている。ただ、県は「建設ルートについては全くの白紙状態。早期に検討会が開始され、周辺道路の渋滞解消などの効果を検証したうえで、具体的なルートが検討されると考えている」と説明する。東関東道や京葉道路、国道357号などの交通渋滞が慢性化しているほか、東京湾アクアライン周辺でも休日を中心に渋滞が頻発。県は渋滞解消や地域活性化、災害時の輸送能力の確保のため、国に対して湾岸地域での新たな道路ネットワークの整備を要請してきた。
 建設ルートに想定される沿岸自治体は、国と県の議論の行方を注視する。浦安市の内田悦嗣市長は「検討会設置に向けたスケジュールなど詳しいことがまだ分からない。市民生活にも影響があり、まずは国や県の具体的な説明を待ちたい」という。市川市は「第二湾岸道路は渋滞解消への貢献が期待される。ただ三番瀬の環境問題も抱えており、関係団体との調整が課題となる」(交通計画課)と指摘する。
 第二湾岸道路を巡っては、建設ルートとして候補に挙がっていた三番瀬を埋め立てる計画の白紙撤回を千葉知事選で公約とした堂本暁子氏が2001年に当選。第二湾岸道路の整備自体はその後も国に要望し続けていたが、具体的な検討は棚上げになっていた。
 三番瀬の保全に取り組む日本湿地ネットワーク(習志野市)の牛野くみ子共同代表は「三番瀬を通るルートに決まれば、どのような工法を採用しても環境への悪影響は避けられない。国や県は構想段階と言っているが、今後の議論をチェックしていきたい」と話している。

埋め立てと青潮 
(「しんぶん赤旗/2019.1.18」より抜粋)
          三番瀬を守る署名ネットワーク代表 田久保晴孝


 東京湾は20%に当たる2万5000㌶が埋め立てられ、干潟の90%が失われました。千葉県は浦安市から富津市にかけて1万2000㌶も埋め立ててしまいました。この埋め立て方法の大部分は、浅海域の海底の砂を海水とともに引き上げて造る埋め立て法です。このやり方は埋め立て地の先の海にも大きな破壊をもたらしました。習志野市から千葉市の埋め立て地の沖には、水深30㍍もの巨大な窪地ができています。この巨大な窪地が、青潮の原因の一つです。
 昨年の6月、三番瀬の干潟一面にハゼなどの死骸がありました。青潮による被害です。青潮は貧酸素水ともいわれ、貝や魚にとって必要な酸素がない海水です。航路や埋め立て工事でできた海底の窪地には、プランクトンの死骸など有機物がたまります。有機物を微生物が分解するときに酸素が使われて貧酸素水ができ、窪地にたまります。貧酸素水の中で硫酸還元菌が硫化物(硫化水素)をつくります。表層の温かい水と下層の冷たい貧酸素水に分かれます。夏から秋に、冷たい北東風が吹くと表層水が冷やされて沖に流されます。下層の貧酸素水は相対的に温かいため、海底の窪地から表層に湧き上がり、干潟などに押し寄せます。硫化水素と酸素が化合して硫黄の粒ができ、光を反射するため、海水が青色に見え、温泉の匂いがします。 貧酸素水と硫化水素の毒で貝や魚類が大量死するのです。毎年繰り返す青潮は漁業にとっても大きな問題です。

 

霞ヶ浦導水路建設問題について
2016年度の目標の一つ「那珂川霞ヶ浦導水路建設に反対しよう!」について、総会で質問が出たので、この問題についてお伝えします。HATでは、「楽しいつり」2008年5月号に下記のような記事を掲載し、那珂川漁協等が展開した工事中止を求める署名活動に参加しました。

第36回定期総会議案書(2009年度)より
2008年5月号の会報に、佐近さんが「那珂川の天然アユが危ない」と題して投稿し、HATも建設反対の署名活動に参加、多くの会員の皆様の協力をいただきました。
 国土交通省は、那珂川の下流域(水戸市)に取水堰を作り、霞ヶ浦までの導水路を作り、霞ヶ浦と那珂川が水不足の時には水を送りあうことで、霞ヶ浦や桜川の水質浄化、東京都及び近辺の県の水不足の解消等が行えると説明しています。
 取水堰ができると、漁獲量日本一の天然アユに壊滅的な打撃を受けます。霞ヶ浦の水を那珂川に送れば、特定外来生物等が移動して、那珂川の生態系に悪影響を与えます。
 この問題は、関東労釣協でも建設反対を決議し、日本労釣とともに署名にも取り組んでいます。これからも、建設を中止させるために、署名活動等の行動を進めていきましょう。

楽しいつり2008.5月号より
那珂川の天然アユが危ない! -霞ヶ浦導水事業・那珂川取水口建設問題-
佐近津里彦
 皆さん知っていますか? 霞ヶ浦と那珂川を結ぶトンネル水路の那珂川取水口着工をめぐって、茨城・栃木の関係漁協と国交省が鋭く対立しています。これは「ムダな公共事業」の典型で、那珂川の生態系に計り知れない影響をもたらし、日本一の漁獲量を誇る那珂川の天然アユは、壊滅的な打撃を受ける可能性があります。私は、那珂川でアユの友釣りを覚えたこともあり、ヤマベでも大好きな川です。この川が壊されるのを黙ってみていることはできません。つり人として、何らかの形で建設反対運動に参加したいと思っています。皆さんも、協力していただける方があれば、是非お願いします。
 以下、国交省のホームページや、最近の新聞記事より一部抜粋して紹介します。

★毎日新聞 2008年4月17日 地方版より
【霞ケ浦導水事業地元説明会 /栃木】
◇那珂川の水質、漁業に悪影響懸念-根強い市民の拒否反応
「那珂川の清流とアユ・サケなどの魚は、市の自然環境のシンボルで、後世に引き継ぐ大切な自然・観光資源」。大田原市はそう位置づける。その環境が守れるかどうか、国土交通省が進める霞ケ浦導水事業で揺らいでいる。国交省は15日夜、同市で県内初の市民向け事業説明会を開き、計画の概要や、那珂川への影響対策を説明し、理解を求めた。しかし市民の拒否反応は強く、環境汚染や漁獲減などを懸念し、計画に反対する声が続出。不安の払しょくには至らなかった。清流・那珂川の環境はどうなるのか--。【柴田光二】
 那珂川の取水口建設予定地は下流域(水戸市渡里町)だが、上流部でも影響が心配され るのは、那珂川と霞ケ浦の水を相互にやり取りする計画だからだ。まず取水の際に、ふ化したばかりの数ミリのアユ、サケの稚魚が吸い込まれ、天然資源が枯渇するのではないかと心配されている。
 国交省は、対策として「吸い込みの流速をゆっくりとし、アユが川を下る期間には取水時間を制限。推定1%の吸い込みには補償で対応する」と説明した。
 霞ケ浦からの逆送水で、汚れた水や那珂川にいない外来魚が流入する問題では「砂ろ過施設を設置して水中の浮遊物質の量を減少させる」ことや、「外来魚の卵をろ過装置で捕捉する」方針を表明。また逆送水は那珂川の渇水時の短期間に限られる、と説明した。
 特に、吸い込み防止対策では、学識経験者らによる試験検討委員会を今年2月に設置するなどして、積極的に取り組んでいることを強調した。
しかし市民側からは、事業に対する不安の声が相次いだ。「霞ケ浦の水の逆送で、外来種、汚染物質、細菌が流入したらどうなるんだ」「計画発表や着工から 20年、30年たったのになぜ今まで説明会ができなかったのか」「なぜ43キロも離れた那珂川から取水しなければならないのか」との疑問がぶつけられた。
 1900億円にのぼる事業費にも「当初の計画から状況が変化しているのに、事業は縮小しないのか」「本当の目的は霞ケ浦の浄化ではなく、工事をやりたいだけではないのか」との指摘が続出。「なぜ、栃木が犠牲にならなければならないのか」との声も出た。
国交省は説明会で、住民の不安や懸念については今後、試験検討委員会の場で話し合いたいとの意向を示した。栃木、茨城両県の漁協代表者に委員会への参加を以前から求めてもいる。ただ、計画前進につながることを警戒する漁協側は、委員会への参加を拒否。独自に学識経験者を交えた対策委員会の設置を検討している。説明会での話し合いは終始かみ合わず、立場の溝は埋まらなかった。
 説明会終了後、参加した市民の一人は「霞ケ浦の水の逆送などとんでもない。アユやサケは生まれた川のにおいを頼って帰ってくる。霞ケ浦の水が混じったのでは環境が変わり、遡上(そじょう)しなくなってしまう。そんなことになったら影響は計り知れない」と怒り込めて語った。
 市長代理で出席した蓮実浩副市長は「地元の肉声を届ける良い機会だった。那珂川の生態系を限りなく守ってもらうため、今後の取り組みに反映させてもらいたい」と話した。

★産経ニュース(2008.3.22)より
【27日に建設中止求め仮処分申請 霞ケ浦導水事業で7漁協】
 国が進める霞ケ浦導水事業で、水戸市内の那珂川取水口の建設に反対する那珂川漁協(城里町)など茨城、栃木両県の7漁協は21日、建設差し止めを求める仮処分を27日に水戸地裁に申し立てることを決めた。
 漁協側は、取水口によるアユの稚魚吸い込みや、霞ケ浦の汚濁した湖水流入による悪影響を懸念。「一方的な事業の強行は許されない」と主張している。
 一方、国土交通省霞ケ浦導水工事事務所は「仮処分申請についてはコメントできない」とし、「実際の取水口で対策効果を確認していただきたい。外部委員会への参加も引き続き呼びかける」と話した。
 取水口は幅50メートル、縦2.5メートルで約15億円の費用をかけ、今年4月にも着工する予定。霞ケ浦導水事業は昭和59年に着工。霞ケ浦、那珂川、利根川を総延長約46キロのトンネルで結び、相互に送水する。総事業費は約1900億円。

★下野新聞(2008.4.8)より
【那珂川取水口の工事中止求め漁連が国へ1万6千人の署名提出】
 国土交通省が進める霞ケ浦導水工事事業の那珂川取水口(水戸市渡里町)建設をめぐり、建設に反対している本県の那珂川漁連(金子清次会長)は七日、現地の那珂機場で、工事中止を求める署名約一万六千人分を同省に提出した。
 漁連を構成する四漁協の正副組合長ら九人が出席。金子会長は「河川環境の悪化を心配する国民の総意で取水口建設に断固反対する」と述べ、国交省担当者に署名を手渡した。
 意見交換で漁協側は「(総事業費の三分の二を既に消化してしまって)残りの事業費で事業を終えられるのか」「(霞ケ浦から送水する予定の)十一トンの水を一瞬でろ過できるのか」などの事業への疑問点を並べ、工事中止を訴えた。
 国交省側は「希望は上部機関に伝える。実物大施設での取水を実際に見て安心してほしい」などと回答、工事継続の姿勢を示した。
 署名は先月七日から十九日間行い、漁協関係者や連合栃木那須地域協議会などが協力。釣り具メーカーの展示会などで一般市民にも呼び掛け、茨城や埼玉県など県外からも集まった。
 金子会長は「『環境を守りたい』という国民と漁民の声を聞き入れ、国は勇気を持って取水をやめてほしい」などと話した。

★国土交通省 関東地方整備局 霞ヶ浦導水工事事務所のホームページより抜粋
【那珂川、霞ヶ浦、利根川の水を地下トンネルを通じてやりとり】事業では那珂川下流部、霞ヶ浦および利根川下流部をつなぐ地下トンネルを建設し、相互に水をやりとりします。それぞれの河川に必要な水量を残した上で、余裕のある水を有効に活用し河川の流況を改善します。
霞ヶ浦導水事業では、那珂川下流域と霞ヶ浦を結ぶ那珂導水路(水戸市渡里地先~土浦市湖北町地先、延長約43km)、利根川下流域と霞ヶ浦を結ぶ利根導水路(稲敷市結佐地先~稲敷市上須田地先、延長約2.6km)の2本の導水路整備します。

国土交通省 関東地方整備局 霞ヶ浦導水工事事務所のホームページより

 

 導水路は深さ20~50mの地中に設けられます。那珂導水路では那珂川から霞ヶ浦、霞ヶ浦から那珂川、利根導水路では利根川から霞ヶ浦、霞ヶ浦から利根川の双方向の導送水を行います。
【霞ヶ浦導水事業の目的は次の3つです】
◎水質浄化◎那珂川、利根川からの導水により、霞ヶ浦や桜川などをきれいにします。
◎水不足の軽減◎
お互いに水を行き来させることで、那珂川と利根川の水不足による被害を減らします。
◎新規都市用水の確保◎那珂川と霞ヶ浦において新たに水道用水、工業用水を供給します。 http://www.ktr.mlit.go.jp/dousui/

 その後の推移
民主党政権時代の2009年9月に工事が凍結されましたが、その後自公政権になってから八ッ場ダム等と同様、当初の計画を復活、2014年8月に工事再開を決定しました。栃木・茨城の漁連・漁協5団体は建設差し止めの請求を水戸地裁に起こしましたが、残念ながら2015年7月に請求棄却の判決が出ました。原告団はすぐに控訴し、現在も裁判は続いています。

東京新聞茨城版2015年7月18日の関連記事
霞ケ浦導水訴訟で水戸地裁 漁協の差し止め請求棄却(東京新聞茨城版2015年7月18日)
県内の霞ケ浦と那珂川、利根川を地下トンネルで結び水を行き来させる霞ケ浦導水事業をめぐり、那珂川流域の県内の四漁協と栃木県の漁連が「漁業権を侵害する」として国に取水口建設工事の差し止めを求めた訴訟の判決で、水戸地裁は十七日、請求を棄却した。
日下部克通裁判長は判決理由で「漁業権が侵害される具体的危険があるとまではいえない。被害の未然の防止措置が一応講じられ、事業には公共性がある」とした。原告側は控訴する方針。
事業は霞ケ浦の水質浄化や首都圏への水の安定供給が目的で一九八四年に着工。二〇一〇年に中断したが、民主党政権の指示で実施された事業検証の結果、国は昨年八月に継続を決めた。地下トンネル二本は、利根導水路(長さ約二・六キロ)が既に完成、那珂導水路(同約四十三キロ)は三十キロ近くが未完成となっている。
原告は〇九年三月に提訴。那珂川の取水口からアユの稚魚が吸い込まれるほか、水質や流量の変化で水産資源に深刻な被害が出ると訴えていた。
公共性について判決は「霞ケ浦と那珂川、利根川の化学物質の濃度差により希釈効果が期待でき、都市用水の確保のため必要」と認定した。一方で「事業の運用次第で漁業権が侵害される可能性がある。漁業環境への影響が最小限に抑制されるよう努力をすることが切に望まれる」と国に促した。
<霞ケ浦導水事業> 全国で2番目に広い湖沼・霞ケ浦と、渇水期が異なる那珂川、利根川を地下トンネルで結び、水を行き来させる国直轄の公共事業。霞ケ浦の水質浄化と茨城、埼玉、千葉、東京の1都3県への水の安定供給を目的に計画され、1984年に着工。当初は93年度の完成予定だったが用地取得が遅れ、地下トンネル2本のうち利根導水路(長さ約2・6キロ)は完成したものの那珂導水路(同約43キロ)は30キロ近くが未完成となっている。事業費約1900億円のうち約8割を使っている。
弁護団声明
  本日、霞ヶ浦導水差止め裁判で、水戸地方裁判所は原告らの訴えを棄却する不当判決を言い渡した。本判決は、漁業者を無視して進められる何の利益もない無駄な公共事業を司法が追認したもので、水戸地裁には無駄な事業から内水面漁業を守ろうという勇気の一片もないことが明らかとなった。行政追随の水戸地裁に厳しく抗議するものである。
 同時に、こうした不当判決を前にしても、長年にわたり団結を維持し、裁判勝利のために奮闘した、原告ら那珂川関係漁協の組合長をはじめとする関係者の努力に対する評価は揺らぐものではなく、弁護団からも心からの賛辞を送りたい。また、原告らの裁判闘争に有形無形のご支援をいただいた評価委員の専門家各位、市民団体・個人のみなさんの多大なご支援にも心より御礼を申し上げる。
 そもそも霞ヶ浦導水事業は、事業の効果も必要性もない無駄な事業である。一審の審理で、国側の専門家証人は「幾ら導水が頑張っても、水質を改善することはできない」と証言するなど、導水事業が霞ヶ浦浄化に役立たないことが明らかになった。また、国土交通省の小島証人の尋問では、国土交通省が関東各都県で水余りの現状にあることを無視していることが明らかとなり、水需要が増加する要因をただの1つもあげることができなかった。
 他方、導水事業では、アユ・シジミを始めとする漁業資源が被害を受ける。国が取水停止しない12月以降にも少なくないアユの仔魚が降下しており、これらが吸い込まれればアユ資源に重大な影響がもたらされると考えられること、導水事業の取水により涸沼が高塩分化・貧酸素化し、涸沼のシジミの生息環境を悪化させると考えられること、こうした懸念は証拠上十分に裏付けられた。
 弁護団は、国が一審での原告らの主張内容を真摯に検討し、ただちに導水事業を中止することを強く求める。また、導水事業を推進する立場に立つ地元自治体が、真に地域住民の利益を守る観点から、推進姿勢を転換するよう求める。
 弁護団としては、このたびの不当判決に屈せず、控訴審で必ずや勝利するために全力を尽くす決意である。   (2015年7月17日  霞ヶ浦導水事業差止め裁判弁護団)

今後は…
 30年前に策定した事業で、1900億円の総工事費のうち1500億円をすでに使っています。30年前とは水需要も全く異なるはずですが、利権も大きく絡むのでしょう、どうしてもやってしまおうという姿勢です。どんな生態系の変化が起こるか皆目分かっていない状態で、二つの全く異なる水系をつなぐという暴挙は、人間活動としても許されないことです。漁協からの要請があれば、またお手伝いしたいと考えています。(文責・佐近津里彦)